BtoBオウンドメディアを外注する前に決めておくこと|任せる範囲と社内に残す役割の考え方

「外注したのに、思ったより楽にならなかった」という話をよく聞きます。記事は上がってくる。でも修正が多い。やり取りに時間がかかる。担当者の負荷はあまり変わっていない。そういう状態です。
原因を探ると、たいてい同じところに行き着きます。何を任せるかを決めずに発注している、ということです。「記事制作をお願いします」という依頼は、外注先にとってはかなり広い指示です。テーマから考えるのか、取材はどちらがやるのか、構成は先に渡すのか、確認は何回発生するのか。これが決まっていないまま動き始めると、毎回の進行が属人的になります。
外注がうまくいくかどうかは、外注先の質より先に、発注側の設計で決まります。
確認に時間がかかる、の正体
外注を始めた現場で最初に詰まるのが、確認のフローです。原稿が上がってきたのに、社内の確認が進まない。差し戻しが来たと思ったら、また別の担当者から別の指摘が来る。公開まで2週間以上かかることも珍しくありません。
確認が遅くなる理由は、たいていの場合、誰が何を確認するかが決まっていないことです。原稿を受け取った担当者が、念のため上長に回す。上長がさらに別の部門に確認する。その間に、それぞれが思い思いの観点で指摘を入れる。こうなると、外注先は何を直せばよいか分からなくなります。
確認の範囲を決めるときは、「誰が最終判断を持つか」を先に決めます。確認者を絞り、その人が何を見るかを事前に共有しておく。事実として正しいか、自社の言葉として違和感がないか、公開してよい情報か。この3点が確認の軸になれば、指摘が整理しやすくなります。
「戻し」が機能しないとき
確認の問題と並んでよく起きるのが、フィードバックが抽象的すぎて外注先に伝わらない、という問題です。
「なんか違う」「もう少し読みやすく」「トーンを変えてほしい」。こうした指摘は、出す側には明確なイメージがあります。ただ、受け取る側には何をどう直せばよいかが見えません。外注先は手探りで修正し、また「なんか違う」が返ってくる。この往復が続くと、双方の消耗だけが積み上がります。
フィードバックを具体的にするには、指摘の種類を分けることが助けになります。事実の誤りなのか、構成の問題なのか、表現の好みなのか。種類が分かれば、外注先も優先順位をつけて修正できます。
ただ、フィードバックを具体化するのは、クライアント側だけでは難しいことがあります。「何が違うか」を言語化するのも、ディレクターの仕事の一つです。クライアントの「なんか違う」を受け取って、「こういうことですか」と整理して外注先に渡す。この翻訳ができると、やり取りの往復が減ります。
こだわるべき細部と、そうでない細部
外注との協業で起きる問題の中で、一番対処が難しいのが、細部へのこだわりが全体を止めてしまうケースです。
以前、まだ国の方針が固まっていない制度に関する記事を制作したことがあります。業界団体が動き始めていて、企業側も対応を考え始めている段階でしたが、正式な決定はまだ先という状況でした。現時点での動向を整理し、企業が今から考えておくべきことを書く、という方向で進めていたのですが、クライアント側が「国の方針と整合性が取れていない部分がある」という点にこだわり始めました。
整合性を取ろうとすること自体は正しいです。ただ、制度がまだ決まっていない以上、完全な整合性は取りようがありません。予測記事として書くのか、現時点の動向整理として書くのか、企業の対応視点で書くのか。着地点を先に決めれば前に進めるのに、決まっていない情報の正確性を追いかけて、記事が止まってしまいました。
これは細部へのこだわりというより、「確定していない情報をどう扱うか」という判断の問題です。そしてこの判断は、クライアント側だけでは決めにくい。外部から制作に関わっているディレクターが、「この記事はここまで書ける、ここからは書けない」という線引きを先に整理して提示する必要があります。
こだわるべき細部と、現時点では割り切るべき細部を分ける。その判断を誰が持つかを決めておかないと、細部の確認が全体の進行を止めます。
間に人を入れると、かえって詰まることがある
外注の調整をスムーズにしようと、間に調整役を入れることがあります。外部のコンサルタントや、社内の別部門の担当者が「制作会社と社内をつなぐ役割」として入るケースです。
ただ、これがかえって詰まる原因になることがあります。実際に経験したケースで、外部コンサルタントが間に入った途端、制作側とクライアント側の意思疎通が難しくなったことがありました。コンサルタントを経由することで、情報が変換される。ニュアンスが変わる。判断が遅くなる。そのコンサルタントが抜けた途端、進行がスムーズになりました。
間に入る人が増えると、情報の経路が長くなります。経路が長くなれば、伝言ゲームのように内容が変わっていきます。調整役が判断を持っていない場合は特に、確認のたびに別の人に聞きに行くことになり、レスポンスが遅くなります。
外注の調整に必要なのは、間に入る人の数ではなく、判断を持つ人が制作に近いところにいることです。社内の担当者が直接やり取りできる体制の方が、たいていの場合はうまく回ります。
社内に残す役割を先に決める
外注の設計で先に決めるべきなのは、任せる範囲よりも、社内に残す役割です。
どれだけ外注しても、社内がゼロになることはありません。情報を持っているのは社内です。確認の責任を持つのも社内です。公開後の使われ方を判断するのも社内です。
社内に残す役割として、最低限必要なのは3つです。
- テーマと方向性の判断
何を記事にするか、どの読者に向けるかを決める役割です。ここが曖昧だと、記事は一般論に寄ります。 - 情報の提供
取材の調整、社内資料の共有、専門知識の確認など、社内にしかない情報を出す役割です。 - 確認と公開の判断
原稿が自社の言葉になっているか、事実として正しいか、公開してよい情報かを判断する役割です。
この3つが社内に残ると決めれば、残りをどこまで任せるかが考えやすくなります。逆に、この3つまで外注しようとすると、記事は一般論になります。社内の情報が入らない記事は、どこにでもある内容になります。
外注は、社内の弱いところを補うために使う
外注を検討するとき、「社内でできないことを全部任せたい」という気持ちになるのは自然です。ただ、外注で機能するのは、社内がやりにくい部分を補う形のときです。
文章を書くのが苦手なら原稿を任せる。取材の時間が取れないなら取材から任せる。テーマを考えるリソースがないなら企画の段階から関与してもらう。社内の弱いところを特定して、そこを補う形で外注の範囲を決めると、コストに見合った効果が出やすくなります。
外注はオウンドメディアを楽にするための手段です。ただし、設計なしに使うと、外注しているのに大変という状態が続きます。何を任せるか、社内に何を残すか、確認の判断を誰が持つか。この3点を先に整理してから発注すると、外注は機能しやすくなります。


