BtoBサイトのコンテンツ導線調査|資料・事例・セミナーはどう置かれているか

BtoBサイトのコンテンツ導線調査。資料、事例、セミナー、料金、相談導線を集めて分析する図解

BtoBサイトを見ると、資料ダウンロード、導入事例、セミナー、記事、料金、問い合わせがいくつも並んでいます。外から見ると、少し多すぎるように見えることもあります。

ただ、公開されているBtoBサイトを横断して見ると、導線が増える理由はかなり現実的です。読者が同じ状態でサイトに来ていないからです。まだ課題を調べている人もいれば、料金を見たい人もいます。上司に共有する材料を探している人もいれば、技術部門や管理部門に確認するための情報を見ている人もいます。

今回は、SaaS、MA・CRM、プロジェクト管理、マーケティング支援、制作会社、バックオフィス、HR、法務、情シス・セキュリティ、大手IT・SIer、IT商社系まで、BtoBの企業・サービスサイトを広めに確認しました。調査対象は公開ページを中心に、重複確認を含めて150件以上です。業界全体を統計的に代表する調査ではありませんが、資料ダウンロード、導入事例、セミナー、記事、料金、相談やデモの入口がどのように置かれているかを見るには十分な量があります。

見たのは、トップページだけではありません。料金ページ、導入事例一覧、資料ダウンロードページ、セミナー情報、記事・コラム、リソース一覧、問い合わせ・デモの入口、大手複数商材サイトの課題別・業種別入口まで確認しています。そのうえで、BtoBサイトでコンテンツをどう置くかを考える材料として整理しました。

資料と相談・デモは、役割が分かれている

多くのBtoBサイトで目立ったのは、資料ダウンロードと相談・デモ・無料トライアルを別の導線として置いていることです。

資料ダウンロードは、まだ比較検討の手前にいる読者を受け止めやすい導線です。サービスの概要を知りたい。社内で共有できる資料がほしい。いきなり問い合わせるほどではないが、詳しい情報は見ておきたい。こうした読者には、問い合わせより資料のほうが動きやすくなります。

一方で、相談、デモ、無料トライアルは、もう少し具体的に確認したい読者に向いています。自社の条件に合うか、費用はどのくらいか、実際の画面は使いやすいか、導入時に何が必要か。ここまで来ると、資料だけでは足りません。

たとえばSaaS系では、「資料ダウンロード」と「無料トライアル」を並べるサイトが多く見られました。資料で比較したい人と、先に触って確かめたい人を分けて受け止めている形です。法人向けでは、そこに「デモ」「問い合わせ」「見積もり」が加わることもあります。

導線受け止めやすい読者よくある配置
資料ダウンロード概要を知りたい、社内共有したいヘッダー、ファーストビュー、本文下部
無料トライアル使い勝手を試したいファーストビュー、料金ページ、CTAエリア
デモ・相談自社条件で確認したいヘッダー右上、料金ページ、記事下部
問い合わせ具体的に話を進めたいヘッダー、フッター、終盤CTA

つまり、CTAが多いサイトは単に欲張っているわけではありません。読者の温度感が違うため、同じ「次の行動」でも複数の入口が必要になります。

事例・記事・セミナーは、検討段階で置き方が変わる

導入事例の置き方にも違いがありました。

ひとつは、導入事例を主要ナビとして独立させる型です。SaaSや業務システムでは、この形がよく見られます。読者が「似た会社で使われているか」「自社と近い課題の事例があるか」を確認しやすいためです。

もうひとつは、ブログ、資料、セミナー、事例をまとめて「リソース」「お役立ち情報」の中に置く型です。大規模なSaaSや海外系サービスでは、この形も見られます。学習コンテンツ、導入事例、レポート、ウェビナーをひとつの情報群として扱うため、ナビ全体は大きくなります。

どちらが正解というより、読者が事例を探す目的で変わります。検討が進んだ読者が「事例」を探しに来るなら、独立した導線が向いています。まだ課題整理の途中で、記事や資料と一緒に事例を見てほしいなら、リソース配下に置く選択もあります。

ただし、BtoBでは事例の分類がかなり重要です。業種、企業規模、部署、課題、利用サービス、導入前の悩み。こうした切り口があると、読者は「自社に近い事例」を探しやすくなります。単に一覧に並べるだけだと、事例数が増えるほど見つけにくくなります。

資料や事例に比べると、セミナーや記事は商談に直結しにくいように見えるかもしれません。ですが、公開サイトを見ていると、セミナー、ウェビナー、ブログ、コラム、用語解説を厚く置いているサイトは少なくありません。

特に、マーケティング支援、バックオフィス、法務、セキュリティのように、読者側の理解がまだ整理されていない領域では、学習系コンテンツが入口になります。課題名を知らない。制度や技術の前提が分からない。社内で何を確認すべきかも決まっていない。そういう状態では、いきなり製品ページや料金ページを見ても判断しにくいからです。

情シス・セキュリティ系では、技術資料、脅威レポート、用語解説、Trustやコンプライアンス情報、開発者向けドキュメントなども目立ちました。これは営業向けの資料とは別の役割です。専門部門が確認するための材料であり、社内で導入可否を判断するための材料でもあります。

記事やセミナーは、読者をすぐ問い合わせに動かすためだけのものではありません。読者が社内で説明できる状態を作るための導線です。

料金ページは、次の行動を置く場所

料金ページも、サイトによって役割が分かれていました。

月額単価やプラン価格を明確に出しているサイトでは、無料トライアル、見積書発行、料金シミュレーション、資料ダウンロードが近くに置かれていることがあります。読者が価格を見たあと、次に何をすればよいかまで用意している形です。

一方で、人事労務、タレントマネジメント、エンタープライズ向け、複数機能を組み合わせるサービスでは、料金ページを用意していても具体額は出さず、見積もりや相談へ誘導する例もあります。これは単に価格を隠しているとは限りません。利用人数、機能、運用条件、サポート範囲で費用が変わるため、公開ページだけでは判断しにくいことがあります。

重要なのは、料金を出すか出さないかだけではありません。料金を出さないなら、何が決まれば見積もれるのかを示す。料金を出すなら、プラン差分や導入時の確認事項も見せる。読者が価格を見たあとに止まらないようにすることです。

料金導線の型向いているケース一緒に置きたい情報
価格を明確に出すプランが標準化されているサービス機能差、無料トライアル、見積書、FAQ
価格帯や料金体系を出す条件によって費用が変わるサービス人数、機能、初期費用、見積もり条件
個別見積もりにする大規模導入、複数商材、運用支援を含む場合相談前に整理すること、導入までの流れ、事例

大手や複数商材型は、入口が増える理由がある

大塚商会、リコー、NEC、NTT系、SIer、IT商社のように商材が多い企業では、コンテンツ量も導線も自然に増えます。

理由は、読者が必ずしも製品名で探していないからです。業種で探す人もいます。部門で探す人もいます。課題名で探す人もいます。企業規模で探す人、導入事例から探す人、サポートやFAQから入る既存顧客もいます。

単品SaaSなら、機能、料金、導入事例、資料請求に集約しやすいです。ところが、複数商材型のサイトでは「どの課題に、どの組み合わせで、誰が導入し、導入後どう支えるか」まで説明する必要があります。

そのため、大量のコンテンツは、見込み客を増やすためだけのものとは限りません。相談前の自己診断、社内稟議、比較検討、導入後サポートを分担している場合があります。読者が自分の言葉で探せる入口を増やすと、サイトはどうしても大きくなります。

サイトの型導線の特徴増えやすいコンテンツ
単品SaaS資料、無料トライアル、料金、事例に集約しやすいプラン比較、事例、FAQ、活用記事
制作・支援会社問い合わせ、無料診断、実績、知見が中心になりやすい実績、ブログ、セミナー、ホワイトペーパー
情シス・セキュリティ系技術資料、レポート、デモ、相談が並びやすい技術資料、用語解説、脅威情報、導入事例
大手・複数商材型業種、課題、部門、製品、サポートで入口が分かれる事例、課題別記事、セミナー、サポート情報

自社のサイトで見るべきなのは、導線の数ではない

調査して感じたのは、導線の数だけをまねても意味がないということです。

資料、事例、セミナー、記事、料金、問い合わせをすべて置けばよいわけではありません。大事なのは、読者がどの段階で何を見たいかです。まだ課題を調べている人に問い合わせだけを出しても早すぎます。料金を見たい人に概念的な記事だけを見せても足りません。社内で説明したい人には、導入事例や比較表、見積もりの前提が必要になります。

まず見るべきなのは、導線の数ではなく、検討段階の抜けです。

  1. 課題を調べる読者に、記事やガイドがあるか
  2. 比較検討する読者に、事例や料金の考え方があるか
  3. 具体的に相談したい読者に、デモや問い合わせがあるか
  4. 社内共有する読者に、資料や要点のまとまったページがあるか
  5. 専門部門が確認する読者に、技術情報やFAQがあるか

この順番で見ると、足りないコンテンツが見えやすくなります。逆に、すでに十分ある導線を増やしても、読者の迷いは減りません。

BtoBサイトのコンテンツ導線は、思った以上に多層です。資料ダウンロードだけでなく、導入事例、セミナー、記事、料金、相談、技術資料、サポート情報まで、読者の状態に合わせて置かれています。

特に、大手や複数商材型のサイトでは、製品名で探す人だけを相手にしていません。業種、部門、課題、企業規模、導入後の利用まで見られるため、入口が増えます。

自社のサイトを見直すときは、導線を増やすか減らすかより先に、読者の検討段階を並べてみるとよいです。課題を調べる人、比較する人、社内に共有する人、専門部門に確認する人。それぞれが必要な情報に届けるか。そこを見ると、BtoBサイトに必要なコンテンツの役割がかなりはっきりします。